第31回 ぐんまこどもの夢大賞 童話部門・最優秀賞
「ポカポカの森」
作:新井 彩月さん (伊勢崎市立宮郷第二小学校 2年)
「今日も雪かぁ。毎日よくふるわねぇ。」
みけねこさんは、お店のまどから外を見て、ハァとためいきをつきました。
みけねこさんは、いろいろなどうぶつたちがくらす森でアイスクリームやさんをやっています。
今年は、何日も雪がふりつづき、森はあたり一めんぎんせかいになってしまいました。
「これじゃあ、今日もまたおきゃくさんはこないだろうな。」
雪がめったにふらないこの森では、あまりのさむさでみんなが家にこもったきりになり、買いものに出てこなくなっ
てしまったのです。
それでもと、みけねこさんはアイスクリームをじゅんびして、お店の前の雪かきをしていました。ザクザクと足音
が聞こえてきました。かおを上げるとひつじさんでした。
「こんにちは、ひつじさん。毎日よくふりますね。」
「本当にね。わたしなんてこんなにモコモコしているのに、さむすぎてぼうしとマフラーと手ぶくろをしてやっと、
外に出られたのよ。」
と言うひつじさんを見ると、とてもあたたかそうで、かわいいもようがあみこまれているものでした。
「あったかそうで、すごくかわいいね。それってもしかして?」
「そう!夏になる前にかった自分の毛をそめて、つむいで毛糸にして、あんだのよ。」
「すごい、すてき!そめるってどうやってするの?」
「家にあるやさいや、くだものでそめるんだよ。」
「えっ?やさいやくだものでできるの?わたしにもできるかな?」
「うん。できるよ。教えてあげるから、こんどわたしの家においでよ。」
「ありがとう。わたしのお店にあるくだものをもっていくね。」
と、二人はやくそくをしました。
やくそくの日、みけねこさんはお店でつかい切れずにのこっていたブルーベリーをもってひつじさんの家へ行きました。
「こんにちは。今日はよろしくおねがいします。ブルーベリーをもってきたんだけど、だいじょうぶかな?」
「いらっしゃい。ブルーベリーいいね。じゃあ、さっそくやろうか。」
と、ひつじさんがとなりのへやから毛をもってきました。へやをのぞくと、ひつじさんの毛で、ひとへやいっぱいに
なっていました。
「すごいりょうだね。」
「そうなんだよ。毎年からなくちゃだからどんどんふえて、へやがいっぱいになってこまってるんだよね。さ、はじ
めましょ。」
大きななべに水を入れて、火にかけました。そこに、みけねこさんがもってきたブルーベリーを入れてしばらくに
ると、ブルーベリーのいいかおりがしてきて、なべの中にきれいなむらさき色のおゆができあがりました。
「おりょうりしてるみたいで楽しいな。ブルーベリーアイスよりきれいな色がでるんだね。」
「はい、ここに毛を入れて、しばらくまっててね。」
おゆがさめたころ取り出すと、きれいなむらさき色にそまっていました。
「ブルーベリーそのままの色できれいだね。これをどうやって毛糸にするの?」
「かわかしてから、これでつむいで毛糸にするんだよ。」
と、ひつじさんは大きな糸車をはこんできました。
かわいた毛をすこしずつ取って糸車にかけて、ひつじさんが糸車をキーカラカラキークルクルとまわしはじめる
と、どんどん毛糸ができてきました。
「こうやって毛糸になるんだね。ひつじさん上手だなあ。」
と、ひつじさんが毛糸をつむいでいるのを見ていると、みけねこさんはいいアイデアを思いつきました。
「ねぇ、ひつじさん、じつはこの大雪でお店におきゃくさんがこなくて、ざいりょうがあまってこまってるんだ。ひ
つじさんのいっぱいある毛をいろいろな色にそめて、毛糸にして森のみんなに何かをあんであげるってどうかな?」
「そのアイデアさいこうだね!セーターとかマフラーとかあればみんな外に出てこられるようになるもんね。」
つぎの日から二人は、毛糸作りをはじめました。大きななべに一しゅるいずつくだものや、やさいをにてつぎつぎ
とそめていきました。ブルーベリーのむらさき、いちごはやさしいピンク色、みかんはそのままきれいなみかん色に
なりました。ぶどうをにてみると、ぶどう色になるかと思ったら、グレーになってみけねこさんはおどろきました。
玉ねぎは外がわのうすかわだけをつかったら、あたたかい黄色になりました。なすのかわをにてみると、これもグレ
ーになってしまいました。
「ぶどうと同じような色になっちゃったね。ちがう色がよかったな。」
と、みけねこさんがざんねんそうに言うと、
「ぶどうはまだのこっていたよね。それと、レモンはある?」
と、ひつじさん。みけねこさんは言われるがままにもう一どぶどうをにはじめました。
「ひつじさん、さっきと同じ色だよ。これでいいの?」
ふあんそうなみけねこさんに、ひつじさんが
「まほうを見せてあげるよ。」
と、レモンのしぼりじるを入れると、グレーだったおゆがパッとあざやかなピンク色になりました。
「えっ?なんで?どんなまほうをつかったの?」
みけねこさんは、びっくりして目をまん丸にしてなべをのぞきこみました。
「おばあちゃんに教えてもらったんだ。」
ひつじさんはちょっととくいげなかおでこたえました。
ぜんぶそめ終えて、二人はキーカラカラキークルクルと、どんどんつむいでいきます。
「一つの色もいいけど、マーブルの毛糸はどうかな?」
ひつじさんが言いました。
「それ、すてきだね。」
みけねこさんがいくつか色をまぜてひつじさんにわたすとキーカラカラキークルクルと糸車をまわしていくと、何色
もまざりあったきれいな毛糸ができあがりました。
二人は森のみんなのかおを思いうかべながら、何日もせっせせっせとあみました。
「できたー!!」
そこには、いろいろなもようや色、大きいサイズ、小さいサイズのセーターやマフラー、ぼうしや手ぶくろができあ
がりました。
「早くみんなにわたしたいね。よろこんでくれるかな?ドキドキするね。」
みけねこさんがまどから外を見ると雪はやっとやんだようですが、かなりつもっていました。そんな中に森のみんな
があつまっていました。
「みんな、こんなにさむいのにどうしたの?」
「みけねこさんとひつじさんがみんなのためにセーターやぼうしを作ってくれているって聞いたからきてみたん
だ。」
「今、ちょうどできあがったところだよ。くまさんやうしさんの大きいサイズはあっち、うさぎさんやりすさんの小
さいサイズはこっちだよ。」
と、みんなをお店へまねき入れました。
「わあ!すてきな色!」
「あたたかそうだねぇ。」
「ぼく、こんなのほしかったんだ。」
と、みんなが手に取ってよろこんでくれました。ねずみさん親子がまよっているのが見えたので、みけねこさんが声
をかけました。
「ねずみさんと子ねずみちゃんにこれはどうかな?」
セーターとぼうしを見せました。
「お母さんとおそろいだよ!かわいいね。これをきてお出かけしようよ。」
子ねずみちゃんはピョンピョンとびはねて大よろこびしています。
森のみんなが、それぞれ気に入ったものを身につけて外に出てみました。
「セーターがモコモコだからさむくないね。」
「耳まであんでくれてあるから、このぼうしがあれば外に出られるわ。」
と、みんなひさしぶりに外を楽しんでいるようでした。
「みけねこさん、ひつじさんありがとう。体も心もあたたかくなりました。」
みんなからのおれいの言ばを聞いて二人も心がポカポカしてきました。
まっ白だった森に色とりどりの毛糸の花がさいて、ひと足早く春がきたようでした。
おわり